東京朝霧山岳会活動日記Ⅱ

会山行活動の簡単な報告です!

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ上記画像:インド ガンゴトリ山群 バスキパルバット(6792m) ㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ※各画像をクリックすると拡大されます

朝霧通信「リモートAsagiri 12月版(年末版)」

中国武漢のコロナ発生から2年が経過し、世界のコロナ死亡者は500万人にまで達しました。世界では、ワクチン接種70%の壁に苦慮していますが、日本は75%超のカナダを抜いてG7国1位となりました。日本国民の見識の高さを感じます。その世界中に蔓延したコロナを減少させた「mRNAワクチン」の開発者が、カタリン・カリコ博士です。現在世界の41億人(53%)が1回接種、32億人(42%)が2回接種の状況です。氏はハンガリー出身で、大学卒業後アメリカに渡り、遺伝物質の「mRNA」の研究を行いましたが研究成果は評価されず、40年にわたる研究生活は苦難の連続だったようです。我国の劇的なコロナ減少は、特にこのワクチンのお陰と考えています。普段、自己願望の山登りに現を抜かしている自分には、頭が下がるばかりです。そして11/22には全国の感染者が50人、東京では11/24に1日5人という画期的な減少を記録しました。国内の店舗飲酒の制限は軽減され、各地ではワクチン接種済の特典キャンペーンも始まっています。しかし欧州では6割を超えるワクチン率でも感染が再燃し、また韓国では日本並の接種率なのに、1日4,000人超の感染者を出しています。我々は今の状態に甘えず、この機に第6波への対策を企てることが必須だと思います。そして遂に、世界初の新型コロナウイルス飲薬の米「モルヌピラビル」が、国内で販売されることになるようです。所で、女性と言えば引退した独のメルケル首相を思い起します。氏は東ドイツ科学アカデミーの物理学研究者で、1989年のベルリンの壁の崩壊後、政治家に転身したそうです。彼女は中道右派で、移民受入れ、原子力発電から自然エネルギーへの変換、人権保護、民主主義の徹底、新自由主義的オープンな経済政策、ロシアとの接近、コロナ対策等と、現実派で多国間協調型の姿勢を16年間取り続けました。理想を求めるばかりでなく、現実的実践力が評価されたと言います。野心に奔走する我国政治家を思うと、目指すものの違いを感じます。さて、コロナも小康状態の今回の衆院選ですが、投票率は前回に次ぐ戦後3番目の56%という低さでした。そして菅政権を懸念し岸田政権に替えた自民党ですが、新幹事長の甘利氏が小選挙区で敗れてしまい議席も減らしました。当初懸念していた議席数の50減は30減に食い止め、何とか過半数を維持しましたが、国民からの厳しい評価が下されました。同様に、立憲民主党議席を減らし、躍進したのは日本維新の会でした。所で山ですが、山野井泰史氏にピオレドール賞の生涯功労賞が与えられました。ピオレドール生涯功労賞はフランスの登山誌が主宰する国際的な賞で、エベレスト無酸素登頂のラインホルト・メスナー等が受賞した賞で、山野井氏は13人目、日本人で初となります。当方も指導員研修会で、初めて氏の講演を聴きました。話は、ギャチュン・カン北壁登頂の経緯で、登頂後の悪天下の下降で雪崩を食らい、妻妙子が落下宙吊りとなり、その彼女を庇って眼をやられた彼は懸垂ピン1本あたり1本指を失うという手探りでの懸垂下降を繰返したそうです。結局手足指10本を失うことになりましたが、ビバークを繰返して何とか生還したということでした。聴衆が全員山岳指導員ということもあってか、裏話を含めて彼の驕りのない姿勢に好感を受けました。 また、治癒後は自宅にクライミングボードを設けて、夫妻共々に失った指でのクライミングに研鑽しているという話に、二人の仲睦まじさを感じました。・・・氏の「登山は判断力が大切。こうすれば死なない、こうすれば登り切れるということを常に考える」という姿勢は、当方が大事と考える慧眼(洞察力)に通じると思いました。( 朝霧 植田 )

山野井氏の登攀実績

1988年のバフィン島トール西壁単独初登攀、1990年のフィッツ・ロイ南西稜冬期単独初登攀、1994年のチョ・オユー南西壁新ルート単独登攀、そして2002年のギャチュン・カン北壁登攀等。
*過去ピオレドール生涯功労者(2009年創設)
1年目はワルテル・ボナッティ、2年目はラインホルト・メスナー、3年目はダグ・スコット。その後はロベール・パラゴ、クルト・ディームベルガー、ジョン・ロスケリー、クリス・ボニントン、ヴォイテク・クルティカ、ジェフ・ロー、アンドレイ・シュトレムフェリ、クシストフ・ヴィエリツキ、そして昨年がカトリーヌ・デスティベル。

( 里山歩きからヒマラヤ登山・・・それが我々のフィールドです ) ㅤㅤㅤ 東京朝霧山岳会